『翻訳夜話2』

投稿者: | 2015年10月14日

村上春樹と柴田元幸の『翻訳夜話2-サリンジャー戦記』(2003年、文藝春秋)を、読みました。

第1部は、村上の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の翻訳をめぐる2人の対談。第2部は、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の謎をめぐる2人の対談。第3部は、村上の『訳者解説』。第4部は、柴田の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の主人公を1人称とした、短編小説でした。

サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』(野崎孝訳)を読んだのは、大学生のとき。たしか、原文でも読みました。その頃を思い出しながら、読みました。

印象に残ったのは、村上の次の2つの言葉。

「四十年も経過すると、我々にとってのオリジナル・テキストの意味みたいなものもけっこう変化してきます。翻訳を立ち上げる文化的背景もずいぶん変化しますし、読者の意識も変わってくるし、だいいち日本語の文体そのものが変わってくる。だから、そういう意味で、ある程度文学史的な重みを持つ本には、翻訳もいくつかの選択肢があってしかるべきだと僕は考えるんです」

「翻訳書には、解説と訳注はどうしても不可欠なものなんです。文化的な背景が違うんだから、一般読者にはそういうものが必要なんです」

なるほど。