『彼女たちの断片』

投稿者: | 2022年4月3日

3月26日、渋谷駅西口から徒歩10分の伝承ホール(渋谷区文化総合センター大和田)で、東京演劇アンサンブルの公演、『彼女たちの断片』を、見てきました。

東京演劇アンサンブルの公演は、『ミラー』(2016年)、『クラチカット』(2019年)、『おじいちゃんの口笛』(2020年)、『宇宙のなかの熊』(2021年)『タージマハルの衛兵』(2021年)を、見たことがあります。

開演30分前に、ホールへ。ほぼ中央のよい席がとれました。

石原燃(劇作家、小説家)の書き下ろし新作。演出は、小森明子。制作は、太田昭。

「今回の作品は、昨年末に承認申請された「妊娠中絶薬」を使う一夜の物語です。先進国のほとんどで承認されているこの薬が、なぜ日本では未承認なのか? 日本の医療の問題を背景に、「男社会」から抜け出せない日本の姿が浮き彫りになります」ということ。

ストーリーは、「ある夜、広告デザイナーの晶と、その母で、仏語翻訳者の葉子が暮らす家に女たちが集まっていた。大学生の多部が妊娠し、中絶に付き添うことになったのだ。晶とともにデザイン事務所を経営する天野と、その娘のみちる。デザイン事務所の後輩である涼。そして、葉子の友だちのまゆみ。

女たちに見守られ、海外の支援団体から手に入れた中絶薬を多部が飲む。女たちは語り合う。歴史について。政治について。それぞれの経験について。その言葉は、互いに響き合い、いつしか社会そのものを映し出していく―」というものです。

全編、女性の役者による劇です。最初は、たくさんの女性が登場するので、人物関係を把握するのが、ちょっと大変でした。また、前半は、日本と世界の妊娠中絶について、説明するためのセリフが多かった気もします。

ただ、歌を挿入したり、ステージの後ろの上部を2階の部屋にしたり、シーツを模した大きな白い布(ビニールかも)を使ったりしたのは、演劇ならではの演出。後半は、修学旅行やお泊り会の一夜に参加するようなかんじで、なにか懐かしい、近しい気持ちになりました。

私は男性で、妊娠することはないので、いままで妊娠中絶について興味をもつことはありませんでしたが、これを機会に、ちょっと学びたいと思いました。劇のあと、田中雅子さん(上智大学総合グローバル学部教授)と石原燃さんのアフタートークがあったのですが、それも勉強になりました。

「私の身体は私のもの」という主人公のセリフを反芻しながら、渋谷のさくら坂の満開の桜の下を、歩いて帰りました。