かなり前ですが、昨年12月10日は、「アシテジ未来ミーティング」の第7回がありました。第20回アシテジ世界大会 /2020国際子どもと舞台芸術・未来フェスティバルの広報戦略チームの主催で、来年3月の開催に向けて、情報共有、意見交換、未来への提案をしていこうというものです。
月に2回、ZOOMで、ゲストを呼んで話してもらい、質疑応答もする。誰でも参加できる、無料の学習会です。
今回の参加者は、アシテジ世界大会・未来フェスの関係者、子ども劇場・おやこ劇場の関係者など、80人ほどでした。テーマは、「学校公演を知る」。
ゲストは、大澗弘幸さん(劇団風の子)、智春さん(Cheeky*Park)、下山久さん(ACO沖縄代表/アシテジ世界大会・未来フェスの芸術監督・プロデューサー)。
前半はまず、大澗さんから、日本の学校公演について、報告がありました。「風の子では、原則6人以下のチーム。鑑賞料金は、1人500-800円くらい。関矢幸雄さんの影響もあり、ステージを使わず、体育館を舞台にすることが増えた」ということ。
「日本の学校公演は、同じ作品を、同じ時間、全学年で見るのが、いいところ。ただ、強制的に見せられるというマイナス点もある。また、低学年も高学年も、同じ作品を見るというのは、そぐわないこともある」ということでした。
次に、智春さんから、イギリスの学校公演について、報告がありました。「多国籍サーカス劇団として、学校を回った。教室での公演もあった。公費の助成、慈善団体からの寄付などが、料金に反映されていた」ということ。
「公演とワークショップを、1セットですることも多かった。教員は、公演を含めた単元学習を構成したりして、学校と芸術家の結びつきが強いと感じた」ということでした。
2人の報告を聞いたあと、グループに分かれての話しあいになりました。私は、もう30年前になりますが、イギリスのダラム大学で、演劇教育を勉強したことがあります。そのさい、劇団の学校公演の見学も、積極的にしました。その記憶が蘇ってきました。
後半はまず、下山久さんから、日本と海外の学校公演について、報告がありました。「昔は、劇団にいて、日本や海外で公演をした。日本の公演は、数100人の観客の前でするのが、普通だった」ということ。
「沖縄のフェスで、デンマークの劇団を呼んだときは、『100人以上の観客の前ではできない』と言われて、驚いた。フランスの乳幼児対象の劇団は、『リミットは、30人』ということだった。演劇は、50-100人で見たほうがいい。その点で、ヨーロッパは進んでいる」ということでした。
「イスラエルでは、法律で、学校公演が義務づけられている。ノルウェーにも、そういう法律がある。日本の劇団は、みんな苦しい。本当は、国が学校公演を支えるべきでは」ということでした。
その報告を聞いたあと、話しあいになりました。「ヨーロッパでは、文化と自由の獲得が、ワンセットだった。日本では、文化や自由が身近にあり過ぎて、その大切さが伝わっていないのでは。その一方で、経済格差や文化格差の連鎖は、広がっている。子どもの人権も、保障されていない」。
「劇場の入場税撤廃は、市民が署名を集めて請願して、成功した。そのときのように、国民運動を起こさないといけない。他人任せにするのではなく、誰が運動をやっていくのかという、主語が必要」といった意見がでました。
私は、「日本の鑑賞教室(体育館演劇)は、誇るべき独自の文化だ」と思っていますが、「海外の公費による少人数の観客を対象とした演劇公演も、羨ましいなあ」と思います。「それぞれのよい部分を、理解・共有して、よりよい社会を実現していく主体となることが、大事かな」と考えました。