日本カナダ学会の紀要、『カナダ研究年報』の第36号(2016年)を、読みました。読んだといっても、論文を1本、目を通しただけですが。
読んだ論文は、神崎舞の「カナダのシェイクスピア-『ロミオとジュリエット』(1989)におけるプレーリーの役割-」。
英語圏オンタリオ州出身のゴードン・マッコールとフランス語圏ケベック州出身のロベール・ルパージュの共同演出による、シェイクスピア劇を分析したものです。
英語を話す俳優とフランス語を話す俳優を起用することで、カナダの二言語間に根深く存在する葛藤を顕在化させた。
それと同時に、カナダのプレーリー(大平原)を舞台にすることで、多様な意味を内包する「周縁(田舎)」性というアイデンティティを獲得し、二言語間の対立を解消する可能性を示したのではないかということでした。
興味深い考察です。この論文は、日本カナダ学会研究奨励賞優秀論文に採択されたとか。今後の研究が楽しみです。