私は、「お仕事はなんですか」と訊かれたときに、「一般社団法人 国際児童青少年舞台芸術協会(アシテジ)日本センターの事務局長をしています」といったあと、「フリーで、演劇教育の研究もしています」と答えるようにしています。
千葉大学で、教育心理劇(ロールプレイング)に出会い、演劇教育(演劇の要素や方法を、学びを豊かで楽しいものにするのに使うこと)に興味を持ち、文部省(現在は、文部科学省)の奨学生として、イギリスのダラム大学で勉強したり、カナダのトロント大学・オンタリオ教育研究所で、研究したりしました。
いろいろあって、博士号はとれませんでしたが、「日本の教員養成大学で、未来の教員や現職の教員に、授業やワークショップをとおして、演劇教育の面白さを紹介したい」と思ってきました。英語の本の翻訳もやりたかったし、海外からゲスト講師も呼びたかったし、自分の本も書きたかったです。
ただ、日本のアカデミアは、私を受け入れてくれませんでした。大学教員の公募に応募したのは、150件を超えると思います。ほとんどが、書類選考で落とされました。日本の大学のフルタイムの教員になることは、ほぼ諦めました。
そして、すこし悲しいことですが、「私の目の黒いうちに、演劇が日本の学校の正規の教科・科目になることはないだろう」と思っています。
それでもなお、フリーで研究を続けているのは、「私に演劇教育の面白さを教えてくれた、私に期待してくれた先生方の恩に報いたい」と思っているからかもしれません。
博士論文執筆のために集めた、トロント大学の演劇教員養成課程のデータは、まだ未発表のままだし、日本の児童青少年舞台芸術について、どうしても書いておきたいテーマも2つあります。もう10年くらい、研究論文の執筆から離れていますが、後悔のないように、まとめておきたいです。
それと、今年の7月に、日本演劇学会分科会・演劇と教育研究会の運営委員になりました。『日本演劇教育研究事典』の編集のお手伝いなどをしています。一般社団法人 日本演劇教育連盟の会員も、40年くらい続けています。もうすこしだけ、日本の演劇教育の普及と発展に、貢献したいと思っています。