『クラカチット』

3月20日、招待をいただいて、西武新宿線の武蔵関駅近くにある、ブレヒトの芝居小屋で、東京演劇アンサンブル制作による演劇公演、『クラカチット』を見てきました。「ブレヒトの芝居小屋 最終公演」ということです。

東京演劇アンサンブルの公演は、2年半ほど前に、『ミラー』を見たことがあります。イエスシアター(パレスチナ)との共同制作による公演でした。

そのとき、はじめて「ブレヒトの芝居小屋」(稽古場・劇場)を訪れたのですが、古いポスターや新聞記事が貼られたロビーに、なんとも言えない居心地のよさを感じたことを覚えています。

今回の公演は、チェコを代表する作家、カレル・チャペックが1924年に発表した、SF長編ロマン、『クラカチット』の脚色上演ということ。

開演10分前に劇場にはいったら、中央は、最前列しか空いていなくて、休憩を含めて3時間10分、俳優の汗がわかる席で見ることになりました。

ストーリーは、「プロコプは新型原子爆薬「クラカチット」の製造に成功する。直後、予期せぬ爆発で大怪我を追ったプロコプは、友人トメシュに助けられ、その製造の秘密を明かす。借金まみれのトメシュは、金策のため実家へ戻ると告げて姿を消す」

「そのトメシュを訪ねてひとりの女性がやって来る。自殺をほのめかしていたトメシュを追ってくれと懇願する娘。その一途さにほだされたプロコプは、トメシュを追う旅に出る。それは「クラカチット」をめぐる長い旅の始まりだった」というものです。

予備知識なしで見ました。最初は、原子爆薬をめぐる物語だと思っていたのですが、中盤から、主人公とさまざまな女性との関わり(ヴェールの娘への恋慕、若く溌溂としたアンチとの淡い恋、高慢な王女ヴィレとの愛憎)が、描かれていきます。

「この作品のテーマは、何なのだろう」と、すこし戸惑いながら見ていったのですが、最後に、「爆薬の発明も、異性との愛憎も、基本、人間の欲望からでてきたもの」と、納得しました。

『ミラー』とは、ずいぶん異なる翻訳劇で、劇団の幅の広さを感じました。そして、居心地のよかった劇場に、さよならを言えたことがよかったです。