『青春舞台2022』

投稿者: | 2023年2月19日

数日前、なにもする気がなくなり、テレビで録画しておいた、NHKのEテレの『青春舞台2022』を見ました。第68回全国高等学校演劇大会の特集です。

地区予選に全国約2000校もの演劇部が参加し、都道府県大会・ブロックの大会を勝ち抜いた12校が、7月31日から8月2日に、東京都中野区で行われた大会に出場したということです。

第1部は、12の出場校の紹介と、2校に焦点をあてたドキュメンタリー。第2部は、最優秀賞を受賞した高校の公演でした。

私が、故・内木文英先生の影響で、高校演劇のファンになってから、20年がたちます。最初の頃は、国立劇場に優秀校公演を見にいっていたのですが、チケットの取りにくさもあって、最近ではテレビでの鑑賞が多くなりました。

まず第1部では、青森県立青森中央高等学校が、取材されていました。顧問の畑澤聖悟は、高校演劇関係者であれば、みんなが知っている人です。実績もあるし、人望もあるのだろうと思います。(『修学旅行』という脚本は、私の大好きな作品です)。

ただ、「カリスマ的な指導者が、ずっと同じ学校で指導していくのはどうだろうか」と思っていた時期もありました。いまは、「彼に指導を受けたくて受験する生徒たちもいるのだろうし、それはそれでいいのかもしれない」と思っています。

脚本は、「タイムループ」という設定を用いて、ロシアによるウクライナへの軍事進攻を受け、高校生たちが戦争と平和の問題をリアルに意識しながら演じたということです。

実は私は、高校演劇で、原子力とか戦争とか、社会や政治の問題を扱うのは、好ましいと思っていませんでした。どうしても、指導者の価値観が、強くでてしまうからです。ただいまは、「そういう指導者に会って、自分でも考えて、経験していくのもいいのかな」と思っています。

2校目は、島根県立三刀屋高等学校の取材でした。『永井隆物語』という、被爆した実在の医師の生涯を描いたものだそうです。実は私は、「高校演劇で、被爆体験を扱うのも、どうだろうか」と思っていた時期もありました。どうしても、無理があるし、感傷的になりがちだからです。

ただ、広島の高校では、被爆体験を扱った作品を、継続的に公演している演劇部もあるとか。いまは、「生徒たちが、それをやりたくて、演劇部にはいり、活動をとおして、いろいろ学んでいくのであれば、いいのかな」と思っています。

第2部は、愛媛の松山東高校演劇部の『きょうは塾に行くふりをして』の公演でした。高校演劇部のリハーサルを舞台にした作品。コロナ禍でも、ひたむきに演劇に向き合う部員たちの姿が描かれます。

まさに、高校生とのやりとりをとおしてしか書けない脚本と、等身大の無理のない自然な演出と演技。私の大好きな高校演劇のかたちです。共感して、笑わせられて、見終わったあと、元気になりました。

作家・演出家の鴻上尚史のコメントも、よかったです。「高校演劇では、彼らのヒリヒリするような思いや生活が、描かれる。それが大きな魅力」ということでした。